CMEPS-J Report No. 95(2025年3月31日作成)
木戸 皓平
本稿は、1950年9月5日に制定されたシリア共和国憲法の全訳である。この憲法は、1946年のフランスからの独立後、シリア初の恒久憲法としてシリア人の手によって制定されたものであり、現代シリアの政治体制と法制度にも通じる基礎を形成した重要な文書である。なおシリアはその後、1963年のバアス党(アラブ社会主義バアス党)によるクーデターを経てシリア・アラブ共和国となり、これに伴い本憲法は停止・廃止され、ハーフィズ・アサド大統領のもとで、1973年憲法が施行されていった。
シリア共和国1950年憲法
序文
我々、アッラーの意志と人民の自由意思により集ったシリア・アラブ人民の代表者たる制憲議会は、ここに以下の崇高なる目的の実現を期して、この憲法を制定することを宣言する。
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- 堅固な基盤の上に司法を確立し、共和的で民主的かつ自由な統治体制の下、裁判所を支援しその独立性を確固たるものとして、あらゆる者に恐怖や偏見なく権利が保障されるよう努めること。
- 基本的人権としての公共の自由をあらゆる国民に保障し、法と秩序のもとでそれを実際に享受できるよう努力すること。公共の自由こそが人格、尊厳、人間性の至高の表現である。
- 友愛の精神を広め、市民の社会意識を高め、一人ひとりが祖国の構成員として自らの必要性を自覚できるよう促すこと。
- 祖国、共和制、憲法を守る義務を支え、すべての国民が命、財産、労力、知識をもってこれに参加することを奨励すること。
- 健全な経済社会体制を構築することにより、貧困、病気、無知、恐怖の惨禍から市民を解放し、社会的公正を実現し、労働者と農民を保護し、弱者や恐れる者を安心させ、すべての国民が祖国の恵みに到達できるよう保障すること。
- 憲法および法律が定める公共の義務と権利において平等を保障し、とりわけ税金の累進課税原則を採用し、犠牲と貢献の能力における公平性を実現すること。
- 個人の人格を育成・強化し、すべての国民が祖国の安全および現在・未来に対する第一の責任者であることを自覚させ、祖国が不滅の真理であり、すべてのシリア人がその守護者として後世に誇り高く威厳ある祖国を引き継ぐことを保証すること。そのためには、健全な愛国的教育を行い、教育の普及を図り、その手段を容易にし、集団のために犠牲を払う精神を育成する。
また国民の多数がイスラームを信仰しているがゆえ、国家はイスラームとその崇高な理想を尊重することを宣言する。
我々はまた、シリア人民がアラブ・イスラーム世界の諸国民との協力関係を強化し、イスラームおよび他の天啓宗教が示す正しい道徳に基づき近代国家を建設し、無神論や道徳的堕落と闘う決意を宣言する。
我々人民は、その歴史、現在、未来を通じてアラブ民族の一部であり、我がアラブ民族が単一国家に統合される日を切望している。我々は独立と自由の下、この崇高な願いを実現すべく尽力する。
本序文は憲法の不可分な一部であり、市民に基本法の原則を想起させるために設けられたものである。我々シリア・アラブ人民の代表者たる制憲議会は、全能なるアッラーに祖国と人民を守り災いから遠ざけるよう祈り、理想を実現し、祖先が築いた栄光を再建し、子孫に栄誉と栄達の道を示せるよう、その歩みを正しく導くことを願う。
第1章 シリア・アラブの共和国
第1条
シリアは完全な主権を有する民主共和制のアラブ国家である。
シリアは政治的に不可分であり、その領土の一部を譲渡することは許されない。
シリア国民はアラブ民族の一部である。
第2条
主権は人民にあり、個人または特定の集団がこれを主張することは許されない。
主権は人民の人民による人民のための統治という原則に基づく。
人民は、この憲法に定められた形態と範囲内で主権を行使する。
第3条
イスラームは共和国大統領の宗教である。
イスラーム法学は立法の主たる源泉である。
信仰の自由は保障される。国家はすべての天啓宗教を尊重し、公共の秩序を乱さない限り、各宗教の儀式を自由に行うことを保障する。
各宗教共同体の個人身分法は保障され、尊重される。
第4条
公用語はアラビア語である。
第5条
共和国の首都はダマスカスである。
第6条
シリアの国旗は以下の通りである。
縦の長さは横の2倍とし、3色の水平帯を等間隔に並べる。最上部が緑色、次に白色、その下に黒色とする。白色の部分には直線状に並んだ3つの赤い五芒星がある。国章および国歌は法律で定める。
第2章 基本原則
第7条
すべて国民は法の前で平等であり、義務、権利、尊厳、社会的地位において差別されない。
第8条
国家は、すべての国民に自由、安心、機会均等を保障する。
第9条
すべての人は法律の範囲内で裁判所を利用する権利を有する。特別な規定がない限り裁判は公開で行われる。
第10条
個人の自由は保障される。
すべての人は、法的に有罪と確定するまでは無罪とみなされる。
司法当局が発行した命令・決定、または現行犯逮捕、もしくは重罪・軽罪容疑で司法当局へ連行する目的の場合以外、逮捕や勾留は許されない。
いかなる者も拷問や屈辱的な扱いを受けてはならず、違反者に対する罰則は法律で定める。
行政当局は、緊急事態、戒厳令、戦争の状況下で、法律に基づいてのみ予防拘留を行うことができる。
逮捕された者は24時間以内に書面で逮捕理由および法的根拠を通知されなければならない。また、逮捕後48時間以内に司法当局へ引き渡されなければならない。
拘留された者は、自身または弁護士、親族を通じて拘留の合法性について担当裁判官に異議を申し立てることができ、裁判官は直ちに審査を行う義務がある。裁判官は拘留命令を出した職員を呼び出して事情を尋ねることができ、拘留が違法と判断された場合は直ちに釈放を命じる。
防御権は捜査段階、裁判段階、あらゆる裁判所において法律に従い保障される。
特別刑事裁判所の設置は許されないが、緊急事態下では特別な手続きが定められる。
軍事裁判所で裁判を受けるのは軍関係者のみとし、例外規定は法律で定める。
行為時点で法律によって定められていなかった行為や不作為について、事後に刑罰を課すことは許されない。また、行為時点で定められていた刑罰より重い刑罰を後から適用することは許されない。
誤った判決によって最終的に刑が執行された者は、国家に対して被った損害の補償を請求する権利を有する。
第11条
刑務所は犯罪者を更生させ、良好な教育を施す場であり、法律はこれを実現するよう定める。
第12条
住居の不可侵は保障される。現行犯または所有者の許可、司法当局の命令に基づく場合を除き、住居に立ち入ったり捜索したりすることは許されない。
第13条
郵便、電報、電話などの通信の秘密は保障される。法律が定める場合以外は没収、遅延、閲覧を行ってはならない。
第14条
国家は表現の自由を保障する。すべてシリア国民は、口頭、筆記、描画その他すべての手段により自由に意見を表明することができる。
法律に明記された制限を超えない限り、意見を理由に個人が処罰されることはない。
第15条
法律の範囲内で出版および印刷の自由を保障する。
新聞の発行停止や認可の取り消しは、法律の定めるところによる。
戒厳令や緊急事態下では、公共の安全および国防上の理由により、新聞、出版物、書籍、放送に対し、法律に基づいて限定的な検閲を行うことができる。
新聞の資金源に対する監視方法は法律で定める。
第16条
シリア国民は法律の範囲内で、平和的かつ非武装の集会およびデモを行う権利を有する。
第17条
シリア国民は、法律に禁止されている目的でない限り、自由に団体を設立し、加盟する権利を有する。
団体の設立通知および財源監視の方法は法律で定める。
第18条
シリア国民は、合法的な目的を有し、平和的手段、民主的制度を持つ政党を設立する権利を有する。
政党の設立通知および財源監視の方法は法律で定める。
第19条
シリア国民を国外へ追放することは許されない。
すべてシリア国民は、裁判所の判決または公衆衛生および安全法の適用を除き、シリア国内での居住と移動の自由を有する。
第20条
政治的信条または自由の擁護を理由として庇護された者の引き渡しは許されない。
通常の犯罪者の引き渡し手続きは、国際協定および国内法により定める。
第21条
所有権には公的所有権と私的所有権がある。
国家、法人、個人は、法律の範囲内で財産を所有することができる。
外国人の財産所有およびその条件については法律で定める。
私的所有権は保障されるが、法律は社会的役割を果たすようにその取得および処分方法を定める。
すべて個人は、自らの物質的、生産的、科学的、文学的成果による物質的および精神的利益を保護される権利を持つ。
私有財産を公共の利益に反する方法で使用することは許されない。
公益のための収用は法律に基づいて行われ、正当な補償を必要とする。
鉱山、鉱物(固体・液体・放射性物質およびそれらに準ずるもの)、地下資源、鉱泉、滝、公有林、公道およびすべての天然資源は国家の所有とする。
鉱物資源等の探査許可条件は法律で定める。
鉱物資源等の開発許可は法律で定め、その付与は国防および国家独立の保証を優先する。
第22条
土地の適切な開発および国民間の公正な社会関係のために、以下の原則に基づく特別な法律を制定する。
(1) 土地の開発義務を定め、一定期間放置された土地の所有権は法律に基づき失効する。
(2) 地域ごとに所有または使用できる土地の面積上限を法律で定める。ただし遡及効はない。
(3) 生産性の向上を図る。
(4) 小規模および中規模農地の所有を奨励する。
(5) 国家が所有する土地のうち、土地を持たない者に対し、生計を立てるに十分な面積を低価格かつ分割払いで提供する。
第23条
財産の一般的没収は禁止する。
個別の没収は司法判決によりのみ行われる。
戦争や自然災害の場合、法律に基づいて個別没収が認められる。
第24条
国家は公益に関わるあらゆる企業または事業を法律によって公正な補償と引き換えに国有化できる。
第25条
税は公正で累進的な方法で課され、平等および社会的正義の原則を達成する。
第26条
労働はすべての国民の権利であり義務である。社会生活の基本的要素として、国家は国民に労働を提供し、国民経済を発展させる義務がある。
国家は労働を保護し、次の原則に基づく立法を行う。
(1) 労働量に見合った賃金を労働者に与えること。
(2) 週ごとの労働時間を規定し、週次および年次の有給休暇を労働者に与えること。
(3) 扶養家族を持つ労働者に特別手当を与えること。また解雇、病気、労働中の障害、緊急事態の際の補償を規定すること。
(4) 女性および外国人労働者の労働条件を規定すること。
(5) 工場に衛生規則を適用すること。
(6) 労働者のために健康的な住居を保障すること。
(7) 組合活動は自由であり、法の範囲内で行うこと。組合は法人格を有する。
第27条
国家は、緊急事態、病気、障害、孤児、非自発的な老齢時において、すべての国民を保護する制度を整える。
そのために、社会保障制度を設け、国家、機関、個人が協力して財源を確保し、病院、産院を設置し、必要な医療手段を提供する。また妊婦、授乳婦、子どもたちへの保護を行う。
第28条
教育はすべての国民の権利である。
初等教育は国立学校において義務であり、無料であり、統一されたカリキュラムに従う。
私立の初等学校は国家が定めたカリキュラムを順守する義務があるが、法律が許可した追加科目を教えることができる。
中等教育、職業教育は国立学校で無料とする。私立の中等学校が必ず教えるべき科目は法律で定める。
宗教教育はすべての段階で義務とし、各宗教の教義に従って行われる。
国家は予算上、初等、農村、職業教育の普及を優先し、すべての国民間で教育機会の平等を図り、国の復興と土地開発を促進する。
高等教育の機関は財政的および行政的に独立を保障される。
教育の目的は、身体的・知的に健全で、アッラーを信じ、高潔な倫理を持ち、アラブの伝統に誇りを持ち、知識を備え、自らの権利義務を理解し、公益のために働き、全ての国民間の連帯と兄弟愛の精神に満ちた世代を育成することである。
これらの目的に反する教育はすべて禁止される。
教育は個性と基本的自由の育成を重視する。
国家は国内すべての教育機関を監督し、監督方法は法律で定める。国家のみが資格証明を発行し、同等性を認定する。
国家はスポーツ、スカウト、青年運動を保護、促進する。
国家は安定的な教育政策のため、教育評議会を設置し、その構成員数、資格、任命方法は法律で定める。評議会は教育政策、プログラムを提案し、政府に報告書を提出する。
国家は科学と芸術を保護、促進し、学術研究を奨励する。
国家は遺跡、史跡、歴史的文化的に価値ある物品を保護する。
第29条
何人も、以下の状況を除き、法律の規定なしに強制労働を課されることはない。
(1) 文化的、建設的または衛生的な公共サービスを行う場合。
(2) 災害救助活動の場合。
(3) 戦争および非常事態の場合。
第30条
祖国と憲法を防衛することは、すべての国民の神聖な義務である。
兵役は義務とし、その詳細は法律で定める。
軍隊は国家を守る守護者であり、その任務は国境と国家の安全を守ることに限定される。
国防会議が設置され、その権限および構成員数は法律で定める。
第31条
シリア国籍の取得条件は法律で定める。シリア人移民、その子孫、ならびにアラブ諸国の国民には特別な便宜を図る。
外国人の法的地位は法律で定め、その際、国際的慣習および協定を考慮する。
第32条
家族は社会の基礎であり、国家の保護を受ける。
国家は結婚を保護し、奨励し、それを妨げる物質的および社会的な障害を取り除く。
第33条
すべてシリア人は、法律で定める条件に従い公職に就く権利を有する。
国およびその関連行政機関、地方自治体における恒久的および臨時的な公職への任用は、一般公募による試験で行われる。ただし、法律で規定された例外を除く。
第34条
イスラームのワクフ財産はムスリムの所有であり、国家の公共機関の一つとして財政的・行政的独立性を有し、その運営については法律で定める。
第3章 立法権
第35条
立法権は、選挙法に従い一般的、秘密、直接、平等の選挙により選出された国民議会(下院)が行使する。
第36条
議会の任期は4年であり、その任期は選挙結果を確定する大統領令が公布された日から開始する。戦争状態の場合を除き、任期の延長は認められない。
第37条
議員は全国民の代表であり、その委任は制限や条件によって拘束されず、名誉と良心に基づいて行使される。
第38条
満18歳に達し、戸籍に登録され、選挙法に定める要件を満たす男女のシリア国民は、選挙権を有する。
第39条
選挙権を持つ者で、かつ識字能力があり、満30歳以上で選挙法が定める要件を満たすシリア国民は、議員に立候補できる。
第40条
選挙法には以下を保証する規定を含めなければならない。
(1) 公正な選挙の実施。
(2) 候補者が選挙手続きを監視する権利。
(3) 有権者の意思を歪める者に対する処罰。
第41条
総選挙は、議会の任期満了の60日前までに行う。何らかの理由で選挙が任期終了時までに実施されない場合、または遅延した場合、議会は新議会が選出されるまで存続し、いずれの場合も新議会選挙の最終結果が発表されるまでその権限を維持する。
議会が解散した場合、解散命令の日から60日以内に総選挙を行う。これが実施されなければ、解散された議会は憲法上のすべての権限を回復し、解散されなかったものとして直ちに再招集される。
総選挙が予定された期日より遅れた場合、議会は遅延の原因を調査し、責任を特定する。
第42条
議会は常に開催可能な状態にある。
議会は毎年10月初日から12月末まで、および3月初日から5月15日までの間、必ず開催される。
上記期間以外の議会の召集日は、議長室の決定、議員の4分の1以上または政府の書面による要求により、議長が決定する。
第43条
選挙終了日の翌日から20日以内に、大統領令により議会が招集される。招集の大統領令が出されない場合、議会は21日目に自動的に開催される。
議会は最初の会合で議長と議長室のメンバーを選出する。
第44条
議員は、公的・非公開の議会および委員会で述べた事実、意見、投票に関し、刑事上および民事上の責任を負わない。
第45条
議員は議会会期中に免責特権を享受し、刑事訴追または刑事罰の執行には議会の許可が必要である。ただし、現行犯の場合は逮捕が可能だが、その場合は直ちに議会に通知する。
第46条
議員は職務開始前に、議会において以下の宣誓を公開して行う。
「私は全能なるアッラーに対し、憲法に忠実であり、祖国の独立、国民の自由、利益、財産および尊厳を守り、国家の法律を尊重し、議員としての職務を名誉、誠実、忠誠をもって遂行し、アラブ諸国の統一を実現するために尽力することを誓う」
第47条
議員の報酬および手当は法律で定める。
第48条
議員はその地位を自己の利益に利用してはならない。
議員職との兼任を禁止する職業および行為については法律で定める。
第49条
何らかの理由で議席が空席となった場合、議席が空席になった日から2か月以内に補欠選挙を行う。ただし、残りの任期が6か月未満の場合は行わない。新議員の任期は議会の任期満了までとする。
第50条
議会は、議員総数の絶対過半数の賛成をもって、法律公布前に犯された罪について恩赦を付与することができる。
第51条
議会はいつでも調査委員会を設置し、または一名以上の議員を任命していかなる事項についても調査させる権利を有する。大臣およびすべての公務員は、議会が求める証言、書類および情報を提供する義務がある。
第52条
(原文で欠落しているため、翻訳せず)
第53条
毎年10月の初回会合では最年長の議員が議長を務め、最年少の二人の議員が書記を担当する。この場で直ちに議長および議長室のメンバーの選挙が行われる。
議長の選出には議員総数の絶対過半数が必要である。過半数が得られない場合、第2回投票で相対過半数をもって選出される。
第54条
議長は議会の秩序維持に責任を負う。
議会は独自の警備隊を有し、その指揮は議長が執る。議長の要請なく他の武装部隊が議会内に入ることや議会付近で待機することは許されない。
第55条
議会の審議は公開で行われる。
政府または10人以上の議員の要請により、特定の事項について秘密会議を開催することができる。
第56条
議会は議員総数の絶対過半数の出席をもってのみ開催される。
議員が正当な理由なく欠席した場合の措置は、議会の内規で定める。
第57条
議会の表決方法は議会内規によって定める。
投票権は出席議員のみに与えられる。
選挙は秘密投票により行われる。
憲法または議会内規に特段の規定がない限り、議会は出席議員の過半数の賛成で議決を行う。賛否同数の場合、議案は否決されたものとする。
第58条
共和国大統領は閣議の承認を得て、またすべての議員は個々に法律案を提案する権利を有する。
ただし、税の廃止・減税・一部免除、国家予算からの支出、国家の借入または保証に関する法律案は、共和国大統領が閣議の承認を得るか、または少なくとも20人の議員が提案する場合のみ提出できる。
第59条
議会は、その立法権を放棄することはできない。
第60条
議会が法案を否決した場合、その法案は6か月を経過しなければ再提出できない。
第61条
議会が法案を承認した場合、共和国大統領はその承認から15日以内に法律として公布する。
議会が議員総数の絶対過半数で緊急性を認めた法律については、その法律が指定する期限内に公布されなければならない。期限内に大統領が公布しない場合は議長が直ちに公布する。
第62条
共和国大統領が緊急性のない法案の再検討を必要と判断した場合、その公布期限内に理由を付した閣議決定による政令にて議会に返送することができる。
議会が議員総数の絶対過半数で法案を再承認した場合、直ちに公布しなければならない。
第63条
法律公布前に議員の4分の1がその合憲性に異議を唱えるか、大統領が違憲性を理由に最高裁判所へ送付した場合、同裁判所が10日以内にその判断を下すまで法律の公布は停止される。
緊急性のある法律の場合、最高裁判所は3日以内に判断を下す。
最高裁判所が違憲と判断した場合、違憲部分を修正するため議会に返送される。
最高裁判所が指定期間内に決定を下さない場合、大統領は法律を公布しなければならない。
第64条
閣議は首相または閣僚の一部が議会の会議に出席して代表しなければならない。
首相および閣僚は議会の会議に出席して発言でき、討論中に専門家の助言を求めることも許される。
議長の要請を受けた閣僚は必ず出席しなければならない。
第65条
議員は政府に質問または質疑を提出する権利を有する。政府は議会内規で定められた期間内に回答しなければならない。
第66条
議会の内規は、議論、質問、質疑、投票、議長室と各委員会の職務など議会のあらゆる活動を規定する。
内規は法律と同等の効力を有し、改正は内規に規定された手続きに従ってのみ可能である。
第67条
議会は15人以上の議員が提出した場合のみ、内閣または個別の閣僚に対する不信任案を審議する。不信任案の審議は提出から2日後以降に行われる。
議会が議員総数の絶対過半数で内閣に対する不信任を決議した場合、内閣全体は辞任しなければならない。個別の閣僚が不信任を受けた場合、その閣僚は辞任する。
第68条
議会は国民または団体から提出されるすべての陳情を調査する委員会を設置しなければならない。同委員会は陳情内容を明確にし、結果を提出者に通知する。
第4章 行政権
第69条
行政権は人民を代表し、憲法に定められた範囲内で共和国大統領と閣僚評議会がこれを行使する。
第1節 共和国大統領
第70条
共和国大統領は国家元首である。
その地位に必要な儀典および特権は法律で定める。
第71条
共和国大統領は議会において秘密投票で選出される。
選出には議員総数の3分の2の得票が必要である。この多数が得られなかった場合は、再度投票が行われ、絶対過半数をもって選出される。絶対過半数も得られない場合は、三度目の投票を行い、相対多数で決定する。
第72条
共和国大統領選挙の被選挙資格は次の通りとする。
シリア国籍を10年以上有すること。
国会議員選挙の被選挙権を有すること。
年齢が満40歳以上であること。
大統領の任期は選挙日から5年である。再任は、任期終了後さらに5年を経過しなければ認められない。
第73条
大統領の任期満了と議会の任期満了が同じ月に重なる場合は、新しい議会の選挙と招集が終わるまで、現職大統領がその地位を継続することができる。ただし、この延長期間は3か月を超えてはならない。
第74条
共和国大統領と国会議員職との兼任は許されない。
第75条
共和国大統領は職務遂行前に、議会において以下の宣誓を行う。
「私は全能なるアッラーに対し、国の憲法と諸法律を尊重し、人民の自由と利益および財産を忠実に守り、共和制に誠実であり、祖国の独立と領土の安全の維持に全力を尽くし、アラブ諸国の統一を実現するために努めることを誓う」
第76条
議会は現職大統領の任期満了の15日前から1か月前の間に、新たな共和国大統領を選出する。
第77条
政府は共和国大統領に対して国際交渉について随時報告する義務がある。
共和国大統領は条約に署名し、議会の承認を得てこれを批准する。
大統領は、外国の外交使節団長の信任を受け入れる権限を持つ。
第78条
共和国大統領は、自ら主宰する閣議を召集することができ、その議事録を記録・保管するよう命じることができる。
第79条
共和国大統領が発するすべての政令、公文書および国家に関する書簡は、首相および担当閣僚が副署する。ただし、首相の任命または辞任の受理に関する政令はこの限りではない。
第80条
共和国大統領は、法律で定められた判事および官吏の任命政令に署名し、また法律に基づいて提出される政令にも署名する。
第81条
共和国大統領が提出された政令を10日以内に署名せず、かつ憲法違反または法律違反として最高裁判所に付託しない場合、首相がこれを公布し、その効力が生じる。
最高裁判所が提出された政令について10日以内に判断を下さない場合も、首相が公布し、効力が生じる。
ただし、共和国大統領は理由を示さずに議会解散政令を拒否する権利、および死刑判決承認の政令に関する特例的権限を保持する。
第82条
共和国大統領は閣議決定を経て、国防評議会の諮問および議会の承認を得て、宣戦布告および講和条約を締結する。
第83条
共和国大統領は軍の最高司令官であり、国防評議会の議長を務める。
第84条
共和国大統領は議会に対して書簡を送付し、議長宛にメッセージを送ることができる。
第85条
共和国大統領は、閣議決定を伴った政令をもって議会を解散できる。
ただし、議会選挙から18か月が経過するまでは議会を解散できない。議会を解散した場合、内閣は辞任し、大統領が選挙管理内閣を任命する。
第86条
共和国大統領は憲法違反および国家反逆罪の場合に責任を問われる。
大統領は一般犯罪についても責任を負う。
共和国大統領を裁判できるのは最高裁判所のみである。
共和国大統領を最高裁判所に付託する提案を審議するには、議員総数の4分の1以上の署名付き文書による要求が議会議長に提出されることが必要である。この要求は提出後、直ちに憲法委員会と司法委員会の合同会議に付託され、委員会は3日以内に報告書を議会に提出する。
提案の審議には特別な会議を設け、他の案件は一切審議しない。
大統領の最高裁判所への付託は、議員総数の絶対過半数の賛成がある場合にのみ認められる。付託が決定した時点で、大統領職は空席と見なされ、最高裁判所の判決が出るまで空席状態が続く。
告発と裁判の手続きは特別法で規定される。
第87条
共和国大統領は特赦を発令する権利を有する。
第88条
共和国大統領が職務遂行不能の場合、議会議長がその権限を行使する。その間、議長は副議長に議会の職務を委任する。
大統領職が永続的に空席となった場合、または大統領が死去または辞任した場合、議会は議長の招集により10日以内に新大統領を選出するために会議を開く。議長が招集しない場合は、11日目に自動的に会議が開かれる。
議会が解散中または任期終了まで2か月未満の場合、議長は新議会が召集されるまで大統領の職務を代行する。
第2節 閣僚評議会(内閣)
第90条
各立法期の始め、新共和国大統領の選出後、内閣が不信任を受けた場合、内閣が辞任した場合、または首相職が空席となった場合は、大統領が首相を任命し、首相の提案に基づいて閣僚を任命する。
第91条
内閣はその政策綱領を議会に提出し、信任投票を求める。
出席議員の過半数が賛成した場合に信任が与えられたものとみなす。
第92条
閣僚評議会は国家の政策を実施する。閣僚評議会は首相の主宰のもと、以下の事項を審議する。
法律案
規則政令
国家予算および特別予算
内政および外交政策
首相または閣僚が首相の承認を得て提案する事項
その他法律で定める事項
閣僚評議会は多数決により決定を行い、閣僚は異議を唱えても辞任しない限りその決定を尊重しなければならない。
第93条
首相府、閣僚評議会、および各閣僚の権限については法律で定める。
第94条
首相は閣議を主宰し、各省庁間の活動を調整する。
首相のみが議会に対して内閣の信任を問うことができる。また首相は自身の権限の一部を閣僚に委任できる。
第95条
共和国大統領は閣僚評議会の承認を得て、法律を施行するための政令を発する。ただし、法律の施行を停止したり、法律の施行義務を免除したり、その規定を変更することはできない。
第96条
内閣が辞任した場合、または不信任決議を受けた場合、新内閣が任命されるまで閣僚は暫定的に職務を遂行する。
第97条
閣僚は在任中、直接的または間接的に国有財産を購入または賃借してはならず、国家またはその管理下にある機関が行う請負・入札に参加してはならない。また、いかなる会社の取締役または代理人にもなれず、商業活動に従事してはならない。
第98条
内閣は国家の一般政策に関して議会に対し連帯して責任を負う。各閣僚は担当省庁の業務について個別に責任を負う。
第99条
閣僚の民事責任、財政責任および刑事責任は法律で定める。
第100条
訴追された閣僚は最高裁判所の判決が出るまで職務停止となる。ただし辞任しても訴追を免れない。
第101条
閣僚は議員職と兼務することができる。
第102条
首相および閣僚の俸給および手当は法律で定める。
第103条
内閣監察局を首相府に設置する。監察局は調査報告書の写しを議会に提出し、その調査結果および意見を報告する。その組織構成、権限、局員の特権については法律で定める。
第5章 司法権
第104条
司法は独立した権力である。
第105条
裁判官は独立しており、法律のほか何者にも従属しない。
裁判官の名誉、良心、公正さは人民の権利と自由を守る保証である。
第106条
裁判官は職務開始前に、公正に裁判を行い、法律を尊重することを宣誓する。
第107条
判決はシリア国民の名において下され、理由を明示しなければならない。
第108条
司法権は次の裁判所が行使する。
最高裁判所
破毀院(破棄裁判所)
その他の裁判所
第109条
裁判官は最高司法評議会の決定に基づき、法律に従って政令で任命される。
第110条
裁判官の昇進、異動、懲戒および罷免は最高司法評議会の決定により法律に従って行われる。
第111条
検察は司法機関の一部であり、司法大臣がこれを統括する。
第112条
検察は司法を守り、法の施行を監視し、違反者を起訴し、刑罰の執行を監督する。
第113条
検察官の任命、昇進、異動、懲戒および罷免は法律で定める。
第114条
一般裁判所および軍事裁判所の人員、階級、裁判官の給与は法律で定める。
第115条
裁判所職員の人員配置、任命、昇進および罷免は司法省が担当し、法律で規定する。
第1節 最高裁判所
第116条
最高裁判所は、14名の候補者名簿の中から議会が選挙する7名の裁判官によって構成される。
候補者名簿は、共和国大統領が選定し、資格ある者の中から、高等教育の学位を持ち、40歳以上で、この任務を遂行するに足る能力を備えた者を対象とする。
議会は名簿受領から10日以内に、特別会議で投票を実施し、7名を選出する。
選出されるには議会全議員の絶対多数の票を得なければならない。
絶対多数に達しない場合、再度投票を実施し、出席議員の多数決で選出する。
それでも決まらない場合、3回目の投票を実施し、その場合は相対多数で選出する。
第117条
最高裁判所の裁判官が兼務できない職務は法律で定める。
第118条
最高裁判所裁判官の任期は5年であり、再選が可能である。
最高裁判所裁判官は、裁判所構成員の4名以上の賛成に基づく決議によらなければ罷免できない。
第119条
最高裁判所は、裁判官の過半数によって、その構成員の中から1名を裁判所長官として5年間の任期で選出する。
第120条
最高裁判所裁判官のポストに空席が生じた場合、大統領は欠員の3倍にあたる候補者名簿を作成し、議会が選挙によって後任を決定する。
この選出は、第116条に定める要件および手続きに従って行われる。
第121条
最高裁判所長官および裁判官は、共和国大統領臨席のもと、議会の特別会議において以下の宣誓を行う。
「私は全能なるアッラーの名において、国家の憲法および法律を尊重し、自らの職務を公平かつ忠実に遂行することを誓う」
第122条
最高裁判所は以下の事項について終局的に裁定する。
第63条に従い付託された法律の合憲性
大統領から付託された政令案の合憲性および適法性
大統領および閣僚に対する裁判
選挙結果に対する異議申し立て
憲法、法律、政令に違反する行政措置、政令または決定の無効化請求(被害を受けた者の申し立てに基づく)
これらの裁定手続きは法律で定める。
第2節 最高司法評議会
第123条
最高司法評議会は7名の裁判官で構成される。
最高裁判所長官(議長)
最高裁判所裁判官から2名
破毀院の上位裁判官から4名
第124条
最高司法評議会議長は、裁判官の任命、昇進、異動、懲戒および罷免を最高司法評議会に提案する。評議会は絶対多数でこれを決定する。
評議会議長は、この決定に基づく政令案を作成し、第80条に従い司法大臣に提出する。
第125条
最高司法評議会は、裁判官の特権、任命、昇進、異動、罷免、懲戒に関する法案を提案する権限を持つ。
第6章 行政区画
第126条
共和国の領土は県に区分され、その数、境界、区分は法律で定める。
第127条
法律は、地方行政機関の長および中央と県の各省庁責任者に広範な権限を与える原則に基づいて定められる。
第128条
各県には議会が設置される。議員の4分の3は選挙により、4分の1は任命により選ばれる。
議会の任期、議員数、選挙方法および任命条件は法律で定める。
県議会は議長および執行委員会を選出する。その任期、権限、職務遂行方法は法律で定める。
第129条
県議会の主な任務は以下の事項に貢献することである。
医療サービスの拡充、母子保健の改善
幼稚園、小学校、職業学校の建設および識字教育の普及促進
都市・農村への安全な飲料水の供給、道路網整備、電力供給の普及
県内の自治体の境界設定
見本市の開催および運営
観光および避暑地の活性化とホテルの監督
地域交通網の整備
温泉・鉱泉の開発利用
森林の造成および植林促進
慈善事業の促進および支援
海洋・河川・陸上の漁業資源の管理および利用促進
第130条
県の業務を遂行するための特別な財源は以下によって構成される。
県内で徴収される一般税収に対する一定比率(法律で定める)
法律の範囲内で県議会が課す地域的な税および手数料(ただし、国民の移動、資産の移転、経済活動を妨げないこと)
県議会の会計規則は法律で定める。
第131条
県議会の審議手続き、決議の執行方法、活動監査の規則は法律で定める。
第7章 財政事項
第133条
政府は国家予算案を作成し、議会のみがこれを承認する権限を持つ。
第134条
各会計年度には、歳入および通常の歳出を含む単一の一般予算が設けられ、特別予算または追加予算は法律によってのみ設置できる。
緊急の必要が生じた場合、政府は複数年度にわたる特別予算案を作成することができるが、議会の承認を経なければ実施できない。
第135条
地方予算の編成、承認、執行、決算に関する規定は法律で定める。
第136条
会計年度の始期は法律で定める。
政府は各会計年度の一般予算案を、年度開始の3か月以上前に議会に提出する。
第137条
議員は、通常予算および特別予算の各項目について個別に採決を行う。
第138条
予算法案には、純粋な財政事項以外の規定を盛り込んではならない。
新規の税やそれに伴う新規支出を要する制度の設置を予算法案に含めてはならない。
予算法の規定は、それが定められた会計年度のみに適用される。
第139条
議会は予算審議において、歳入および歳出の総額を政府の提案額よりも増額してはならない。
予算委員会は、歳入歳出総額を超えない範囲で予算案の修正を提案することができる。
予算委員会の報告書提出後は、議員は歳出の増額や新たな支出の提案を行うことはできない。
予算承認後に新たな歳出およびそれに伴う歳入を規定する法律を議会は承認することができる。
第140条
議会が年度開始までに予算案を承認できなかった場合、政府は前年度予算の12分の1に相当する暫定月間予算を政令により設けることができる。この際、歳入は前年度末時点で有効な法律に従い徴収する。
第141条
政府は、各行政機関に割り当てられた予算額を超えて支出することはできず、予算法にそれを許可する規定を設けることもできない。
新規または追加の支出を認めるには、法律によることを要する。
第142条
政府は各会計年度終了後2年以内に最終決算を議会に提出し、決算は法律で確定する。
第143条
課税は公共の利益のためにのみ行われる。
税は貨幣で課され、法律で定められた例外的な状況を除き、現物税を課すことはできない。
第144条
税の新設、変更、廃止は法律でのみ行われる。
法律で定められた場合を除き、いかなる者も税金の全部または一部の免除を受けることはできない。
法律で定められた方法以外で税金を課すことはできない。
第145条
国家または公共機関が借入を行う場合は、借入の条件、利率、償還方法を規定する法律によらなければならない。
国家が貸付または保証を行う場合も法律による。
国庫支出を伴う契約や約束の締結方法は法律で規定する。
第146条
天然資源の独占利用権、または公益に関わる特定事業の独占権の付与は、法律で定められ、期間を限定する。
第147条
会計検査院は議会を代理して国家の財政状況を監査し、違反事項およびその責任者を記した報告書を議会に提出する。
会計検査院の委員は議会が絶対多数で選出し、絶対多数が得られなければ再度投票を行い、相対多数で選出する。議会事務局が選挙のために定めた候補者リストから選出する。
会計検査院は議会に直接所属する。
会計検査院の組織、委員の職務、特権、監査手続きは議会事務局が提出する法案により定める。
会計検査院の予算は議会予算の一部をなす。
第148条
議会は、会計検査院に対して、歳入歳出や国庫管理に関する特定の調査や検査を命じることができる。
第149条
政府は国家の財政状況を年に一度以上議会に報告しなければならない。
第150条
通貨制度は法律で規定する。
第8章 経済事項
第151条
国家は国民経済を監督・調整し、土地の有効利用、産業および商業の発展を図り、全国民に雇用を提供し、国民の生活水準の向上を確保する。
第152条
国家に経済最高評議会を常設し、国家の経済発展に必要な計画および施策を立案する。
同評議会は、政府および議会に対し報告書と勧告を提出する。
経済最高評議会の委員数およびその選任方法は、同評議会の目的を達成できるよう法律で定める。
第153条
特定のプロジェクトの実施・管理のため、財政的・行政的独立性を有する機関を設立することができる。設立の際は法律によって委員の数、選任方法および監督方法を定める。
第154条
国家は、灌漑事業や土地改良事業に対して支出した資金を、その事業によって利益を得る者から、その能力に応じた期間内に回収する。この期間は法律で定める。
第9章 憲法の改正
第155条
大統領は閣議の承認を経て、議員はその3分の1以上の署名をもって、憲法条文の一部または全部の改正を提案できる。この場合、以下の要件を満たすことが必要である。
(a) 改正の提案には、改正対象となる条文および改正の理由を明示する。
(b) 改正提案が議員から出された場合は、議員総数の3分の1以上の署名が必要である。
(c) 議会は改正提案を審議し、議員総数の絶対多数によって提案が承認されれば、改正の意思があるとみなされる。提案が否決された場合、同一条文の改正提案は1年間再提出できない。
(d) 議会が改正の意思を承認した後、6か月を経て再度審議を行い、議員総数の3分の2以上が承認した場合、改正は憲法の本文に編入され、発効する。
憲法改正の承認後、議員は2週間以内に改正後の憲法に対して改めて宣誓を行う。
第10章 経過規定
第156条
本憲法の施行から2年間は改正することができない。
第157条
大統領および大臣の責任に関する法律およびその裁判手続に関する法律を、本憲法施行後6か月以内に制定しなければならない。
第158条
国家はベドウィンの定住化を促進する。
遊牧民の伝統や慣習を考慮した特別な法律を制定し、遊牧民の定住化を段階的に達成するためのプログラムを、予算とともに法律で定める。
選挙法には、遊牧民の戸籍状況や投票方法に配慮した暫定的な規定を設ける。
第159条
本憲法施行後10年以内に、全国で初等教育を普及させなければならない。
このための段階的かつ詳細なプログラムを予算とともに法律で定める。
期間内に在任するすべての政府は、この目的を達成するためのプログラムを実施する義務を負う。
第160条
本憲法施行後10年以内に国内の文盲を撲滅しなければならない。
このための段階的かつ詳細なプログラムを予算とともに法律で定める。
期間内に在任するすべての政府は、この目的を達成するためのプログラムを実施する義務を負う。
第161条
本憲法施行後2年以内に、国民全員を対象とした戸籍簿を整備しなければならない。
第162条
本憲法の承認後、議会は直ちに特別委員会を設け、現行法を本憲法に適合させるための法律案を提出する。同委員会は専門家の助けを借りることができる。
委員会および議会は、本憲法施行後2年以内にその任務を完了しなければならない。
第163条
現行法令のうち、本憲法に反するものは、本憲法に合致するよう改正されるまでの間、一時的に効力を有する。
第164条
現在の制憲議会は本憲法の承認によりその役割を終了し、そのまま憲法に基づく議会(国民議会)としての権限を行使するものとする。
議会の任期開始日は1949年12月1日とし、第53条に規定する議会役員の選挙が行われるまでは現議会の役員がその任務を継続する。
第165条
憲法裁判所の最初の構成員を選出するため、大統領は就任後4か月以内に第116条に定める条件に従い候補者名簿を提出する。
第166条
本憲法は承認の日から施行され、制憲議会議長がこれを公布する。
ダマスカスにて
ヒジュラ暦1369年ズー・カアダ月23日
西暦1950年9月5日
制憲議会議長 ルシュディー・キーヒヤー
(出所)1950年憲法の原文はSyriancc.comなどで閲覧可能。