シリア・アラブ共和国1964年憲法(全訳)

CMEPS-J Report No. 96(2025年5月1日作成)

木戸 皓平

本稿は、1964年4月25日に制定されたシリア・アラブ共和国暫定憲法の全訳である。これは、1963年3月8日のクーデター(いわゆる「バアス革命」)によりシリアの政権を掌握したアラブ社会主義バアス党が、初めて制定した憲法であり、国家革命指導評議会のもとで導入され、同党の統治体制確立を目的としていた。この憲法は、1966年2月23日のバアス党地域臨時指導部決定第1号に基づき、1966年5月1日に正式に公布された。

シリア・アラブ共和国1964年暫定憲法

前文

いかなる国家にとって、ある特定の時期に憲法を制定する根本的な目的とは、国民が未来に向かって進む道筋を明確に示す指針を設け、国家の諸機関の活動を規制し、法令や法律の源泉となることである。

アラブ諸国における憲法の制定には、分断というアラブ民族が置かれた現実からくる特殊な状況や段階的な性格が伴う。この憲法は、アラブ人民の意思に応える限りにおいて、彼らの目標を具体化し、進路を明確にし、アラブ民族の統一実現に向けた闘争を促進するものでなければならない。

アラブ民族は、過去のすべての時代において、あらゆる搾取、分断、植民地支配から解放された統一アラブ国家の建設のために闘争を続けてきた。この統一国家の樹立こそが、アラブ民族の人格を完成させ、国際社会において積極的な役割を果たすための真の枠組みである。

アラブ民族は、相次ぐ侵略や占領の波、そして分断や搾取、後進性を固定化しようとするあらゆる挑戦に立ち向かい続けてきた。各アラブ諸国が獲得した独立は、その国の人民の闘争のみによる結果ではなく、大きなアラブ祖国の全ての地域における統一されたアラブ民族の闘争による成果でもある。

今世紀初頭以来、アラブ世界各地で犠牲と献身の道を歩む殉教者たちが相次ぎ、自由の木を潤し、人民の道を照らす松明となり、アラブ民族の運命と目標の真の象徴となってきた。今世紀の前半が過ぎ去るにつれ、アラブ民族の闘争は各地域で広がり、直接的な植民地主義からの解放を実現した。アラブ人民は、独立を目標や犠牲の終着点として見ていたのではなく、独立を闘争を強化する手段、そして植民地主義、シオニズム、搾取勢力に対抗する進歩的かつ革命的な力の指導のもと、統一、自由、社会主義というアラブ民族の目標を実現するための継続的な戦いにおける新たな段階として捉えていた。

シリアにおいては、独立後も我が民族の人民はアラブ社会主義バアス党の指導の下で闘争を続け、1963年3月8日の革命を起こし権力を掌握することによって大きな勝利を達成した。この権力は、闘争を強化し、アラブ民族の偉大な目標に向かって前進するための手段となった。

アラブ社会主義バアス党は、搾取や支配のあらゆる形態から解放された未来を創造するというアラブの勤労人民の意思と願望を代表する政党であり、その未来とはアラブ民族が輝かしい過去と結びつき、あらゆる抑圧された民族の自由獲得のために貢献し、人類の進歩に積極的に寄与する役割を担うことができる未来である。

バアス党は、アラブ民族の現実から望ましい未来への移行は、アラブ社会のあらゆる側面を包含し、アラブ民族が担う使命に見合った徹底的かつ全面的な革命を通じてのみ可能であることを認識していた。

バアス党は、こうした革命の理論的基盤を、アラブ人民の深層、アラブ民族の過去・現在・未来の条件、人類思想の遺産、他民族の闘争経験、現代世界の諸条件から引き出して構築した。

バアス党は、アラブ世界において、アラブ統一に真の革命的意味を与え、民族主義的闘争と社会主義的闘争を結びつける最初の運動であった。そのため、党にとってのアラブ民族運動とは、アラブ勤労人民自身の問題であり、この人民が統一に向かう道筋は同時に社会主義と完全な解放への道でもあった。

党と革命の指導部が、アラブ人民の意思に基づいて制定したこの暫定憲法は、シリアにおける我が民族の闘争を導き、そのエネルギーを組織し、アラブ民族の一つの戦いに結集させるための誠実な試みを象徴する。

党の指導部はこの暫定憲法の策定にあたり、過去の段階の状況を完全に把握し、革命が次の段階で直面するであろう重大な課題の本質を深く認識することから出発したのである。

1964年に制定された暫定憲法は、シリア国内における革命的転換の段階における課題を十分に吸収しきれなかったため、1966年2月23日付のアラブ社会主義バアス党暫定地域指導部決定第1号により、その効力が停止された。そして、その後の期間には、1966年2月25日付の地域指導部決定第2号が実施され、国家の諸統治機関間の権限およびその相互関係が定められた。

この期間を通じて、党と革命の指導部は、人民の組織化と社会の変革において大きな努力を注ぎ、党大会の決定を実行に移し、人民民主主義の諸制度の構築を完遂するための客観的条件を整えるべく尽力した。そして、それと同時に、社会主義的変革の条件に合致し、革命の道筋を保護し、未来へと向かう歩みを後押しする憲法上の枠組みに適う制度的な形式に到達することを目指した。

党指導部はまた、人民の役割を深化させ、国家運営や革命の計画における責任を果たさせるために必要なあらゆる重要措置を講じた。

その後、1969年3月末に開催されたアラブ社会主義バアス党第4回特別地域会議において、シリア全土のレベルで人民議会を設立し、立法権を行使し、恒久憲法を制定することが決定された。また、今後の段階の枠組みを規定し、国家の諸権力および諸制度間の関係を整理する暫定憲法を制定すべきことも決議された。

この会議の決議を受けて、アラブ社会主義バアス党の地域指導部は、以下の主要な基本方針に基づき、本暫定憲法を制定した。

    1. 包括的なアラブ革命は、統一、自由、社会主義というアラブ民族の願望を実現するために現在も継続的に必要である。シリア・アラブ共和国における革命はこの包括的アラブ革命の一部であり、そのすべての分野における方針は、アラブ革命の全体的な戦略から派生している。このような明確な民族主義的な展望のなかで、シリアにおける革命はその基本的かつ段階的な課題を定め、あらゆるレベルにおける立場や計画、実行プログラムを策定し、現在の段階ではアラブ人民にとっての根本的かつ運命的な目標、すなわちシオニズムによる植民地的占領からの解放の実現に向け努力を傾けている。
    2. いかなるアラブ国家であれ、解放と発展の道を進むうえで達成した成果は、たとえどれほど大きなものであっても、ゆがめられたり後退したりする可能性が常にあり、それらはアラブ人民が実現を目指す統一国家という枠組みの中でこそ、真の意味を持ちうるものである。各地域単位で孤立した国家形態に閉じこもることは、アラブ革命の目標に反し、アラブ人民の犠牲を否定するものである。アラブ世界における国家の分断は人為的なものであり、それらは統一国家の中で消滅しなければならない。アラブ統一は、アラブ人民にとって民族的な救済であるだけでなく、経済的・社会的な解放、後進性からの脱却という観点でも救済であり、現代の諸課題や危機に対処するための社会主義社会を建設するために不可欠な土台である。
    3.  社会主義体制の樹立に向けた歩みは、アラブ社会の必要性から生じたものであると同時に、アラブ人民の勤労層、すなわちアラブ人民の圧倒的多数を戦列に加え、彼らがシオニズムと植民地主義に抗して闘い、アラブ現実において根本的かつ包括的な変革を実現し、階級が消滅し、人間による人間のあらゆる形の搾取が根絶された統一アラブ社会主義社会を築くための不可欠な要請でもある。
    4. 自由は集団と個人にとって神聖な目標であり、それは抽象的な概念ではなく、社会的・経済的解放と結びついた実践的な営みである。これを実現するには、我々の人民が経験し、多数派の意思を特定の少数勢力の利益のために偽装する手段として用いられてきた、従来型の議会制では不十分である。しかしながら、「議会主義」を超えることは、専制的・個人的・官僚的・軍事的統治形態への移行を意味するものではなく、より広く、より深い民主主義、すなわち人民民主主義への移行を意味する。この憲法は、その目標を明確にし、その制度を定めており、人民が革命の目標を達成するために自らの権利を行使し義務を果たすことを保障する理想的な形式として人民民主主義を位置づけている。それはまた、権力を絶えず刷新し、革命の推進力を強化し、人民の成果を固め、大衆運動の成長とその意識および組織化を深めるための適切な環境を提供する正当な枠組みでもある。
    5. アラブ革命運動は、世界的解放運動の不可欠な一部であり、完全な解放を目指して闘う我々の人民は、世界各地の闘う人民や自由と進歩の諸勢力と共に、あらゆる形態の植民地主義、搾取、差別、そして人種的区別に抗する一つの共通の戦いにおいて、可能な限りのあらゆる支援を惜しまない。

この憲法は、シリア・アラブ共和国における我が人民とその革命権力にとって、今後の段階における指針となるべきものであり、その性格上、暫定的なものである。この憲法は、実践を通じて内容が豊かにされ、革命運動の継続を通じて諸側面が明確化され深化される必要がある。これらのことは、将来的に人民議会が制定する恒久憲法の中で完成される可能性を有している。

これらの基本方針を踏まえて、シリア・アラブ共和国の我ら人民は、指導政党であるアラブ社会主義バアス党の導きの下、この憲法の指針に則り、解放と建設の闘いを継続し、その目標を明確にし、地位を強化し、未来に向けて歩みを進めることとなる。

1部 基本原則

1章 国家・社会システムの原則

第1条

    1. シリア・アラブ共和国は、民主的かつ人民的な社会主義国家であり、主権を有し、アラブ祖国の一部を構成する。
    2. シリアのアラブ人民は、アラブ民族の一部である。

第2条

    1. 国家の統治体制は共和制である。
    2. 主権は人民に属し、本憲法に定める方法で権力を行使する。

第3条

イスラーム法学は主要な立法源である。

第4条

公用語はアラビア語である。

第5条

首都はダマスカスである。

第6条

    1. 国旗の形状は以下のとおりとする:「縦の長さの2倍の横幅で、赤・白・黒の3色が平行に等分されており、中央の白帯の直線上に等間隔で五芒星の緑色の星が3つ配置されている」
    2. 国家の紋章および国歌は、法律により定められる。

第7条

アラブ社会主義バアス党は、社会および国家の指導的政党である。

第8条

人民組織と協同組合は、社会の発展と組合員の利益のために働く人民の力を結集する組織である。

第9条

人民議会は民主的に選出される組織であり、国民はそれを通じて国家の管理および社会の指導における権利を行使する。

第10条

軍およびその他の防衛組織は、祖国の領土の安全とアラブ統一社会主義革命の目標を守る責任を負う。

第11条

すべての国家機関は、国民の目的を達成し、国民の生活水準を向上させ、国民、組織、人民機関の生活を自由に発展させ、この憲法で保障された基本的権利を保護するために、国民に奉仕するものである。

2章 経済的原則

第12条

国家の経済は計画社会主義経済であり、あらゆる形態の搾取を根絶することを目的とする。

地域の経済計画は、アラブ祖国における経済的統合の達成に資するものでなければならない。

第13条

法律は所有権を規定する。所有権には以下の3種類がある。

    1. 公有財産:天然資源、公共施設、国有化された施設および国家が設立した施設を含む。国家はこれらの財産を人民全体の利益のために管理、運営する義務を負い、国民はそれらを保護する義務を負う。
    1. 集団所有財産:人民組織、職業組織、生産単位、協同組合およびその他の社会的施設の所有財産である。法律はこれらの財産を保護し、支援する。
    1. 個人所有財産:個人が所有する財産である。法律は国家経済と開発計画の枠組み内におけるその社会的役割を定め、この財産は人民の利益に反する方法で使用されてはならない。

第14条

相続権は法律に従い保障される。

第15条

私的経済機関の運営と稼働は、社会的需要に応え、人民の繁栄および社会的富の増進に資するものでなければならない。

第16条

公的財産は人民の所有であり、すべての国民はこれを保護する義務がある。

3章 教育的、文化的原則

第17条

教育、文化制度は、アラブの歴史と領土につながり、その遺産に誇りを持ち、統一、自由、社会主義という国家の目標を達成し、人類の奉仕と進歩に貢献するために闘う精神を身につけた、アラブの民族主義的、社会主義的、科学的思考を持つ世代を生み出すことを目指す。

第18条

教育制度は、人民の絶え間ない進歩を保証し、人民の社会的、経済的、文化的ニーズの継続的な発展に適応するものでなければならない。

第19条

    1. 国家は、アラブ民族の理想および人類の課題を実現することを目的とした民族的・社会主義的文化を奨励し、これを社会建設の基礎とみなす。
    2. 国家は、すべての市民の芸術的関心・能力・才能を奨励する。
    3. 国家は、体育教育を奨励し、健全な身体・倫理・思考を備えた世代を育成するための要素の一つと見なす。

第20条

    1. 科学および研究、ならびにあらゆる科学的成果は、社会主義的アラブ社会の発展にとって不可欠な要素と見なされ、国家はこれに対して全面的な支援を提供するものとする。
    2. 国家は、社会の利益に資する著作権および発明者の権利を保護する。

第2部 市民の権利および義務、人民組織および協同組合

1章 国民の権利および義務

第21条

シリア・アラブ国籍およびその条件は、法により定められ、在外のシリア・アラブ人およびその子女、ならびにアラブ祖国のその他の国民に対して特別な便宜を保障する。

第22条

国民は法律に従って自らの権利を行使し、自由を享受する。

第23条

    1. 国民は法律の下で、権利および義務において平等である。
    2. 国家は国民の機会均等の原則を保障する。

第24条

国家は、女性が政治的、社会的、文化的、経済的生活に完全かつ効果的に参加するためのあらゆる機会を保障し、女性の発展および社会主義的アラブ社会の建設への参加を妨げる障害を取り除く。

第25条

国家は国民の個人的な自由を保障し、その尊厳と安全を保護する。

第26条

    1. すべての人は、確定した司法判決により有罪とされるまで無罪と推定される。
    2. 何人も、法律に基づく場合を除き、監視または拘束されない。
    3. 防御の権利は法により保障される。

第27条

犯罪と刑罰は法律によってのみ定められる。

第28条

    1. 住居の不可侵は保障される。法律に規定された場合を除き、立ち入りまたは捜索されない。

第29条

郵便および通信の秘密は、法に定められた規定に従い保障される。

第30条

    1. いかなる国民は祖国から追放されることはない。
    2. すべて国民は、司法の決定または公衆衛生および公共安全の法律に基づく場合を除き、国家の領土内を自由に移動する権利を有する。

第31条

    1. 信教の自由は保障される。国家はすべての宗教を尊重する。
    2. 国家は公共秩序を乱さない限り、あらゆる宗教儀式を行う自由を保障する。

第32条

すべて国民は国民の政治的、経済的、社会的及び文化的生活に貢献する権利を有し、これは法律により規定される。

第33条

    1. 労働はすべての国民の権利かつ義務であり、国家は全国民に労働を提供する。
    2. 国民は労働の性質と成果に応じた報酬を受ける権利を持ち、国家はこれを保障する。
    3. 国は労働時間数を決定し、労働者の社会保障を保証し、休息、休暇、報酬、賞与の権利を規制する

第34条

教育はすべて国民の権利であり、初等教育は義務であり、すべての段階において無償である。

第35条

すべて国民は、法の範囲内で自己の意見を自由かつ公開の場で表明し、監視と批判に参画する権利を有する。

第36条

    1. すべて国民は祖国の安全を守り、その憲法と社会主義的統一体制を尊重するという神聖な義務を負う。
    2. 兵役は義務であり、法律で規定される。

第37条

税金および公的負担の支払いは、法律に従った義務である。

第38条

法律の規定は、その施行の日から生じた事項にのみ適用され、遡及効を有しない。ただし、非刑事事件については、これと異なる規定を設けることができる。

第39条

    1. 家族は社会の基本的単位であり、国家の保護を受ける。
    2. 国家は結婚を保護・奨励し、結婚を妨げる物質的・社会的障害を取り除き、母親と子供を保護を保護する。

第40条

    1. 国家は、緊急事態、疾病、障害、孤児、老齢の場合、すべての国民およびその家族を保障する。
    2. 国家は国民の健康を保護し、予防措置および治療、医療の手段を提供する。

第41条

政治的原則または自由の擁護を理由とした政治亡命者の引き渡しは禁止される。

第2章 人民組織および協同組合

第42条

人民部門は、労働組合、社会的・職業的組織、生産またはサービスを目的とした協同組合を設立する権利を有する。

第43条

これらの組織の枠組み、相互関係、活動範囲は法により定められ、当該法はこれらの組織の独立性を保障しなければならない。

第44条

これらの組織は、法律により規定される各種機関や評議会を通じ、以下の事項の実現において積極的に貢献する:

    1.  アラブ社会主義社会の建設およびその体制の保護。
    2. 社会主義経済の計画および運営。
    3. 労働条件、予防措置、保健、文化、その他構成員の生活に関わるすべての事項の改善。
    4. 科学技術の進歩の実現および生産方法の改善。
    5. 統治機関に対する人民による監督。

第3部 国家の構成および行政システム

統治機構

第45条

国家における統治機関は以下からなる: 1. 地域人民議会。 2. 国家大統領および閣僚会議(内閣)。 3. 地方人民評議会。4. 司法および検察機関。

第1章 人民議会

第46条

(地域)人民議会は、国家権力における最高機関である。

第47条

人民議会の任期は4年とし、最初の会議開催日から起算する。議会の構成、会期、議員の権利と義務については法律によって定められる。また、議事運営および任務遂行のためのあらゆる手続きを規定する内部規則も定められる。

第48条

人民議会は以下の権限を有する:

    1. 恒久憲法の制定
    2. 国家大統領の選出(人民議会議員の被選挙資格を満たす国民のなかから)
    3. 法律の承認
    4. 閣僚の方針の審議および信任の付与。
    5. 閣僚への質疑、内閣および各閣僚に対する追及、ならびに不信任の表明。
    6. 一般予算および開発計画の承認
    7. 国家の安全に関する国際条約および協定の承認。
    8. 恩赦の承認。

第49条

人民議会の議員は、公開・非公開の会議または委員会活動において述べた事実、表明した意見、または投票行為に関して、刑事または民事上の責任を問われない。

第50条

人民議会議員は、評議会の会期中において議員としての不逮捕特権を有し、刑事訴追または刑の執行は、人民評議会の許可がある場合を除いて行うことができない。
ただし、現行犯の場合はこの限りでなく、その際は評議会に直ちに通知しなければならない。

第51条

人民議会の議員は、職務を開始する前に、議場において以下の宣誓を行うものとする:
「私は、名誉と信念にかけて、民主的人民体制を忠実に守り、憲法と法律を尊重し、人民の利益と祖国の安全を擁護し、アラブ民族の統一・自由・社会主義の目標を実現するために尽力し、闘うことを誓います」。

第2章 国家大統領および閣僚評議会

第52条

(欠番)

第53条

国家大統領は軍隊の最高司令官である。

第54条

国家大統領は以下の権限を行使する:

    1. 首相の任命、首相の提案に基づく閣僚の任命、および辞任の受理。
    2. 人民議会によって所定多数で承認された法律の公布、または評議会閉会中に閣僚会議により承認された法令(立法令)の公布。国家大統領は、受領日から15日以内に理由を明記して法律に拒否権を行使できる。ただし、人民議会が議員の3分の2以上の多数で再度承認した場合、国家大統領はこれを公布しなければならない。
    3. 既存の法律に基づくその他の政令の公布。
    4. 閣僚評議会の決定および人民議会の承認をもって、戦争および総動員の宣言を行うこと。
    5. 外交使節の任命および外国の外交使節の信任状受理、人民議会が承認した条約および協定の締結。
    6. 恩赦の付与。
    7. 勲章の授与。

第55条

国家大統領は、閣僚評議会の決定に基づいて評議会を解散する政令を発することができる。この場合、新たな議会の選挙を3か月以内に実施しなければならない。

第56条

国家大統領は人民議会を召集する権限を有する。

第57条

国家大統領は閣僚評議会を自らの主宰のもとで招集する権限を有する。

第58条

国家元首は、現行の法律に基づく共和国大統領としてのすべての権利および権限を行使する。ただし、本憲法により他の統治機関に付与された権限と矛盾してはならない。

第59条

国家元首は、人民議会の場で以下の宣誓を行う:
「私は、名誉と信念にかけて、民主的人民体制を忠実に守り、憲法と法律を尊重し、人民の利益と祖国の安全を擁護し、アラブ民族の統一・自由・社会主義の目標を実現するために尽力し、闘うことを誓います」

第60条

国家大統領がその職務を遂行できない場合、人民議会議長がその権限を代行する。ただし、当該期間中、議長職は副議長に委任される。障害が永続的な場合、または死亡または辞任があった場合には、人民議会議長の招集により、10日以内に新たな国家大統領の選出のための会議を開催する。もし議会が解散中であるか、任期満了まで2か月未満である場合には、首相が新議会の招集まで国家大統領の職務を代行する。

第61条

人民評議会の会期外において、閣僚評議会は立法権を行使する。ただし、その発した法および立法令は、人民議会の会期においてすべて報告され、議員の3分の2の多数により改正または撤回されることがある。ただし、その効力は遡及しない。

第62条

閣僚評議会は、法律および規則の実施に関する責任を負い、国家機関によるそれらの執行を監督し、国家の一般政策の策定および実行を担う。

第63条

閣僚評議会は、国家予算案、国家資源の開発および利用、国民経済と所得を支援・増進するための計画を策定する。予算編成、開発計画および会計年度の開始時期については、法律により定められる。

第64条

本憲法において定められた権限に加え、閣僚評議会、首相および各大臣は、現行法に基づく権限を行使する。ただし、他の統治機関に本憲法で付与された権限と矛盾してはならない。

第65条

閣僚評議会は、連帯して人民議会に対して責任を負う。また、各大臣は自らの省の職務について、首相に対して個別に責任を負う。

第66条

首相および各大臣は、職務に就任する前に、共和国大統領の前で以下の宣誓を行う:
「私は、名誉と信念にかけて、民主的人民体制を忠実に守り、憲法と法律を尊重し、人民の利益と祖国の安全を擁護し、アラブ民族の統一・自由・社会主義の目標を実現するために尽力し、闘うことを誓います」

第3章 地方人民議会

第67条

    1. 地方人民議会は、法律に従って各行政単位において権限を行使する機関である。
    2. 行政単位は法律の規定に従って定義される。

第68条

地方人民議会の権限、その選挙方法、構成、議員の権利および義務、その他関連するすべての規定は法律で定められる。

第4章 司法および検察

第69条

裁判官は独立しており、その裁判においては法律以外のいかなる権威にも従わない。

第70条

判決は、シリア・アラブ人民の名において下される。

第71条

法律は、裁判所の制度、その種類、裁判官の等級を規定し、各裁判所の管轄を定める。

第72条

法律は裁判官の任命、昇進、転任、懲戒および罷免の条件を規定する。

第73条

検察は法務大臣を長とする司法機関であり、その機能と権限は法律により定められる。

第74条

国務院は行政裁判権を行使する。裁判官の任命、昇進、懲戒、罷免の条件は法律で規定される。

第4部 最終規定・経過規定

第1章 最終規定および経過規定

第75条

本憲法の前文は、その不可分の部分と見なされる。

第76条

本憲法は、人民議会の議員の3分の2以上の多数による決議によって改正することができる。

第77条

本憲法の公布までに施行された現行法令は、本憲法の規定に合致するように改正されるまでの間、引き続き効力を有する。

第78条

人民評議会が招集されるまでの間、アラブ社会主義バアス党地域指導部は、本暫定憲法の改正および以下の権限を行使する:
●大統領の任命、または必要に応じて代理人の指名、辞任の受理および罷免。 ●首相および閣僚の任命、罷免、辞任の受理。 ●国家の一般方針の承認。 ●戦争および総動員の承認。

第79条

人民議会が招集されるまでの間、閣僚会議は、第78条に規定された事項を除く立法権を行使するものとし、これに基づき発せられた法令は、第61条の規定の対象とはならない。

第80条

アラブ社会主義バアス党地域指導部決定第2号(1966年2月25日)および1964年発布の暫定憲法は失効し、本憲法は公布日より施行される。

(出所)1973年憲法の原文はSyriancc.comなどで閲覧可能。