ラーミー・ハムドゥッラー内閣(2013年6月~2019年4月)

鈴木啓之

目次

概要

2013年に成立したハムドゥッラー内閣は、サラーム・ファイヤード内閣(第12~14代内閣・2007年7月~2013年6月)の解散を受けて、マフムード・アッバース大統領による任命で成立した。ファイヤード内閣と同様に実務家出身の閣僚が多数を占めるが、多くはファタハやアッバース大統領に親和的な人物と看做されている。

首相に任命されたラーミー・ハムドゥッラーは、英文学を専門とするアカデミストであり、1998年から西岸地区ナーブルスのナジャーフ大学の学長を務めている。また、ハムドゥッラーは1996年の第一回パレスチナ暫定自治政府(PA)立法評議会選挙では中央選挙委員会の委員を、2006年の第二回PA立法評議会選挙では同委員会の事務局長を務めた。

第一次ハムドゥッラー内閣は、発足から1ヶ月と経たない2013年6月20日にハムドゥッラー自身が辞任を申し出たことで解散したが、アッバース大統領によって再組閣が命じられ、閣僚をまったく入れ替えずに第二次ハムドゥッラー内閣が同年9月19日に発足した。一方で、2014年6月2日に成立した第三次ハムドゥッラー内閣は、2007年6月から分断状態にあるガザ地区のハマース内閣と合同で立ち上げた「国民統一内閣」であり、これによって10年近くに亘って続いた党派対立が収束することが期待された。しかしながら、アッバース大統領が2015年7月1日に5名以内の閣僚であれば一方的な改組が可能との見解を打ち出し、その月末に実際に改組が行われたことで「国民統一内閣」は事実上崩壊した。

2019年1月29日にアッバース大統領による意向を受ける形でハムドゥッラー首相が総辞職を提出し、2019年4月13日にムハンマド・アシュタイヤ内閣が成立したことで解散した。

第一次ハムドゥッラー内閣(2013年6月6日発足・第15代内閣)

  • 首相:ラーミー・ハムドゥッラー(Rāmī Ḥamd Allāh) 無所属
  • 副首相:ズィヤード・アブー・アムル(Ziyād Abū ʻAmrū) 無所属
  • 経済担当副首相:ムハンマド・ムスタファー(Muḥammad Muṣṭafā)
  • 閣議議長:ファワーズ・アキル(Fawāz ʻAqil)
  • 外務担当大臣:リヤード・マーリキー(Riyāḍ al-Mālikī)
  • 内務大臣:サイード・アブー・アリー(Saʻīd Abū ʻAlī)
  • 運輸交通大臣:ナビール・ドゥマイディー(Nabīl Ḍumaydī)
  • 金融大臣:シュクリー・ビシャーラ(Shukrī Bishāra)
  • 国家経済大臣:ジャワード・ハルズッラー(Jawād Ḥarz Allāh)
  • 労働大臣:アフマド・マジュダラーニー(Aḥmad Majdalānī) パレスチナ人民闘争戦線
  • 地方行政大臣:サーイド・カウニー(Sā’id al-Kawnī)
  • 住宅公共施設大臣:マーヒル・グナイム(Māhir Ghunaym)
  • 観光文化財大臣:ローラー・マアーイア(Rūlā Maʻāyʻā)
  • 報道文化大臣:アンワル・アブー・イーシャ(Anwar Abū ʻĪsha)
  • 保健大臣:ジャワード・アワード(Jawād ʻAwād) 無所属
  • 教育・高等教育大臣:アリー・アブー・ザハリー(ʻAlī Abū Zahrī)
  • ワクフ宗教関連大臣:マフムード・ハッバーシュ(Maḥmūd al-Habbāsh) ファタハ(元ハマース)
  • 通信情報技術大臣:サファー・ナースィルッディーン(Ṣafā’ Nāṣir al-Dīn)
  • 法務大臣:アリー・ムハンナー(ʻAlī Muhannā) ファタハ
  • 農業大臣:ワリード・アッサーフ(Walīd ʻAssāf) ファタハ
  • 社会担当大臣:カマール・シャラーフィー(Kamāl al-Sharāfī) 無所属
  • 女性担当大臣:ラビーハ・ハムダーン(Rabīḥa Ḥamdān) ファタハ
  • 囚人釈放者担当大臣:イーサー・カラーキウ(ʻĪsā Qarāqiʻ) ファタハ
  • 計画担当大臣:ムハンマド・アブー・ラマダーン(Muḥammad Abū Ramḍān)
  • エルサレム担当大臣:アドナーン・フサイニー(ʻAdnān al-Ḥusaynī)

第二次ハムドゥッラー内閣(2013年9月19日発足・第16代内閣)

  • 首相:ラーミー・ハムドゥッラー(Rāmī Ḥamd Allāh) 無所属
  • 副首相:ズィヤード・アブー・アムル(Ziyād Abū ʻAmrū) 無所属
  • 経済担当副首相:ムハンマド・ムスタファー(Muḥammad Muṣṭafā)
  • 閣議議長:ファワーズ・アキル(Fawāz ʻAqil)
    2014年2月よりアリー・アブー・ディヤーク(ʻAlī Abū Diyāk)
  • 外務担当大臣:リヤード・マーリキー(Riyāḍ al-Mālikī)
  • 内務大臣:サイード・アブー・アリー(Saʻīd Abū ʻAlī)
  • 運輸交通大臣:ナビール・ドゥマイディー(Nabīl Ḍumaydī)
  • 金融大臣:シュクリー・ビシャーラ(Shukrī Bishāra)
  • 国家経済大臣:ジャワード・ハルズッラー(Jawād Ḥarz Allāh)
  • 労働大臣:アフマド・マジュダラーニー(Aḥmad Majdalānī) パレスチナ人民闘争戦線
  • 地方行政大臣:サーイド・カウニー(Sā’id al-Kawnī)
  • 住宅公共施設大臣:マーヒル・グナイム(Māhir Ghunaym)
  • 観光文化財大臣:ローラー・マアーイア(Rūlā Maʻāyʻā)
  • 保健大臣:ジャワード・アワード(Jawād ʻAwād) 無所属
  • 教育・高等教育大臣:アリー・アブー・ザハリー(ʻAlī Abū Zahrī)
  • ワクフ宗教関連大臣:マフムード・ハッバーシュ(Maḥmūd al-Habbāsh) ファタハ(元ハマース)
  • 通信情報技術大臣:サファー・ナースィルッディーン(Ṣafā’ Nāṣir al-Dīn)
  • 法務大臣:アリー・ムハンナー(ʻAlī Muhannā) ファタハ
  • 農業大臣:ワリード・アッサーフ(Walīd ʻAssāf) ファタハ
  • 文化大臣:アンワル・アブー・イーシャ(Anwar Abū ʻĪsha)
  • 社会担当大臣:カマール・シャラーフィー(Kamāl al-Sharāfī) 無党派
  • 女性担当大臣:ラビーハ・ハムダーン(Rabīḥa Ḥamdān) ファタハ
  • 囚人釈放者担当大臣:イーサー・カラーキウ(ʻĪsā Qarāqiʻ) ファタハ
  • 計画担当大臣:ムハンマド・アブー・ラマダーン(Muḥammad Abū Ramḍān)
  • エルサレム担当大臣:アドナーン・フサイニー(ʻAdnān al-Ḥusaynī)

第三次ハムドゥッラー内閣(2014年6月2日発足・2015年7月31日改組・第17代内閣)

    • 首相:ラーミー・ハムドゥッラー(Rāmī Ḥamd Allāh) 無所属
    • 副首相:ズィヤード・アブー・アムル(Ziyād Abū ʻAmrū) 無所属
    • 経済担当副首相:ムハンマド・ムスタファー(Muḥammad Muṣṭafā)
      2015年8月に辞任・後任なし
    • 閣議議長:アリー・アブー・ディヤーク(ʻAlī Abū Diyāk)
      2016年9月28日よりサラーフ・アルヤーン(Ṣalāḥ ʻAlyān)
    • 外務担当大臣:リヤード・マーリキー(Riyāḍ al-Mālikī)
    • 内務大臣:ラーミー・ハムドゥッラー(首相と兼任) 無所属
    • 運輸交通大臣:アラーム・ムーサー(ʻAlām Mūsā)
      2015年7月31日よりサミーフ・トゥバイラ(Samīḥ Ṭubayla)
    • 金融大臣:シュクリー・ビシャーラ(Shukrī Bishāra)
    • 国家経済大臣:ムハンマド・ムスタファー(経済担当副首相と兼任)
      2015年7月31日よりアビール・アウダ(ʻAbīr ʻAwda)
    • 労働大臣:マアムーン・アブー・シャフラー(Ma’mūn Abū Shahlā)
    • 地方行政大臣:ナーイフ・アブー・ハラフ(Nāyif Abū Khalaf)
      2015年7月31日よりフサイン・アウラジ(Ḥusayn al-Aʻraj)
    • 住宅公共施設大臣:ムフィード・ハサーイナ(Mufīd Ḥasāyina)
    • 観光文化財大臣:ローラー・マアーイア(Rūlā Maʻāyʻā)
    • 保健大臣:ジャワード・アワード(Jawād ʻAwād) 無所属
    • 教育・高等教育大臣:ハウラ・シャフシール(Khawla Shakhshīr)
      2015年7月31日よりサブリー・サイダム(Ṣabrī Ṣaydam) ファタハ
    • ワクフ宗教関連大臣:ユースフ・アドイース(Yūsuf Adʻīs)
    • 通信情報技術大臣:アラーム・ムーサー(2015年7月まで運輸交通大臣を兼任)
    • 法務大臣:サリーム・サッカー(Salīm al-Saqqā)
      2015年12月14日よりアブー・アリー・ディヤーク(ʻAlī Abū Diyāk) 無所属
    • 農業大臣:シャウキー・イーサ(Shawqī al-ʻĪsa)
      2015年7月31日よりスフィヤーン・スルターン(Sufiyām Sulṭān)
    • 文化大臣:ズィヤード・アブー・アムル(副首相と兼任)
      2015年12月14日よりイーハーブ・ブサイスー(Īhāb Busaysū) 無所属
    • 社会担当大臣*:シャウキー・イーサ(農業大臣と兼任)
      2015年12月14日よりイブラーヒーム・シャーイル(Ibrāhīm al-Shāʻir)
    • 女性担当大臣:ハイファー・アガー(Hayfā’ al-Aghā)
    • 計画大臣**:シュクリー・ビシャーラ(金融大臣と兼任)
    • エルサレム担当大臣:アドナーン・フサイニー(ʻAdnān al-Ḥusaynī)

*社会担当省(Wizāra al-Shuʼūn al-Ijtimāʻī)は社会開発省(Wizāra Tanmiya al-Ijtimāʻī)へと名称変更がなされた。
**計画省(Wizāra al-Takhṭīṭ)は、2015年9月時点で解散の方針が閣議によって示された。

出典

所属政党・党派については、以下を基準として判断した。
a. ʻAbd al-Hādī [2008] に記載される政党または党派、およびその関連団体での役職経験の有無。
b. 2006年PA立法評議会選挙に立候補した人物の場合は、その際の所属政党。
c. 本人のWebサイト、またはパレスチナ内閣Webページ掲載の個人プロフィールでの表記。
上記を参照の上で所属政党が不明の人物については、当該欄を空欄とした。

(2018年12月3日作成、2019年4月15日更新)