鈴木啓之
目次
- 概要
- 第一次ハムドゥッラー内閣(2013年6月6日発足・第15代内閣)
- 第二次ハムドゥッラー内閣(2013年9月19日発足・第16代内閣)
- 第三次ハムドゥッラー内閣(2014年6月2日発足・2015年7月31日改組・第17代内閣)
- 出典
概要
2013年に成立したハムドゥッラー内閣は、サラーム・ファイヤード内閣(第12~14代内閣・2007年7月~2013年6月)の解散を受けて、マフムード・アッバース大統領による任命で成立した。ファイヤード内閣と同様に実務家出身の閣僚が多数を占めるが、多くはファタハやアッバース大統領に親和的な人物と看做されている。
首相に任命されたラーミー・ハムドゥッラーは、英文学を専門とするアカデミストであり、1998年から西岸地区ナーブルスのナジャーフ大学の学長を務めている。また、ハムドゥッラーは1996年の第一回パレスチナ暫定自治政府(PA)立法評議会選挙では中央選挙委員会の委員を、2006年の第二回PA立法評議会選挙では同委員会の事務局長を務めた。
第一次ハムドゥッラー内閣は、発足から1ヶ月と経たない2013年6月20日にハムドゥッラー自身が辞任を申し出たことで解散したが、アッバース大統領によって再組閣が命じられ、閣僚をまったく入れ替えずに第二次ハムドゥッラー内閣が同年9月19日に発足した。一方で、2014年6月2日に成立した第三次ハムドゥッラー内閣は、2007年6月から分断状態にあるガザ地区のハマース内閣と合同で立ち上げた「国民統一内閣」であり、これによって10年近くに亘って続いた党派対立が収束することが期待された。しかしながら、アッバース大統領が2015年7月1日に5名以内の閣僚であれば一方的な改組が可能との見解を打ち出し、その月末に実際に改組が行われたことで「国民統一内閣」は事実上崩壊した。
2019年1月29日にアッバース大統領による意向を受ける形でハムドゥッラー首相が総辞職を提出し、2019年4月13日にムハンマド・アシュタイヤ内閣が成立したことで解散した。
第一次ハムドゥッラー内閣(2013年6月6日発足・第15代内閣)
- 首相:ラーミー・ハムドゥッラー(Rāmī Ḥamd Allāh) 無所属
- 副首相:ズィヤード・アブー・アムル(Ziyād Abū ʻAmrū) 無所属
- 経済担当副首相:ムハンマド・ムスタファー(Muḥammad Muṣṭafā)
- 閣議議長:ファワーズ・アキル(Fawāz ʻAqil)
- 外務担当大臣:リヤード・マーリキー(Riyāḍ al-Mālikī)
- 内務大臣:サイード・アブー・アリー(Saʻīd Abū ʻAlī)
- 運輸交通大臣:ナビール・ドゥマイディー(Nabīl Ḍumaydī)
- 金融大臣:シュクリー・ビシャーラ(Shukrī Bishāra)
- 国家経済大臣:ジャワード・ハルズッラー(Jawād Ḥarz Allāh)
- 労働大臣:アフマド・マジュダラーニー(Aḥmad Majdalānī) パレスチナ人民闘争戦線
- 地方行政大臣:サーイド・カウニー(Sā’id al-Kawnī)
- 住宅公共施設大臣:マーヒル・グナイム(Māhir Ghunaym)
- 観光文化財大臣:ローラー・マアーイア(Rūlā Maʻāyʻā)
- 報道文化大臣:アンワル・アブー・イーシャ(Anwar Abū ʻĪsha)
- 保健大臣:ジャワード・アワード(Jawād ʻAwād) 無所属
- 教育・高等教育大臣:アリー・アブー・ザハリー(ʻAlī Abū Zahrī)
- ワクフ宗教関連大臣:マフムード・ハッバーシュ(Maḥmūd al-Habbāsh) ファタハ(元ハマース)
- 通信情報技術大臣:サファー・ナースィルッディーン(Ṣafā’ Nāṣir al-Dīn)
- 法務大臣:アリー・ムハンナー(ʻAlī Muhannā) ファタハ
- 農業大臣:ワリード・アッサーフ(Walīd ʻAssāf) ファタハ
- 社会担当大臣:カマール・シャラーフィー(Kamāl al-Sharāfī) 無所属
- 女性担当大臣:ラビーハ・ハムダーン(Rabīḥa Ḥamdān) ファタハ
- 囚人釈放者担当大臣:イーサー・カラーキウ(ʻĪsā Qarāqiʻ) ファタハ
- 計画担当大臣:ムハンマド・アブー・ラマダーン(Muḥammad Abū Ramḍān)
- エルサレム担当大臣:アドナーン・フサイニー(ʻAdnān al-Ḥusaynī)
第二次ハムドゥッラー内閣(2013年9月19日発足・第16代内閣)
- 首相:ラーミー・ハムドゥッラー(Rāmī Ḥamd Allāh) 無所属
- 副首相:ズィヤード・アブー・アムル(Ziyād Abū ʻAmrū) 無所属
- 経済担当副首相:ムハンマド・ムスタファー(Muḥammad Muṣṭafā)
- 閣議議長:ファワーズ・アキル(Fawāz ʻAqil)
2014年2月よりアリー・アブー・ディヤーク(ʻAlī Abū Diyāk) - 外務担当大臣:リヤード・マーリキー(Riyāḍ al-Mālikī)
- 内務大臣:サイード・アブー・アリー(Saʻīd Abū ʻAlī)
- 運輸交通大臣:ナビール・ドゥマイディー(Nabīl Ḍumaydī)
- 金融大臣:シュクリー・ビシャーラ(Shukrī Bishāra)
- 国家経済大臣:ジャワード・ハルズッラー(Jawād Ḥarz Allāh)
- 労働大臣:アフマド・マジュダラーニー(Aḥmad Majdalānī) パレスチナ人民闘争戦線
- 地方行政大臣:サーイド・カウニー(Sā’id al-Kawnī)
- 住宅公共施設大臣:マーヒル・グナイム(Māhir Ghunaym)
- 観光文化財大臣:ローラー・マアーイア(Rūlā Maʻāyʻā)
- 保健大臣:ジャワード・アワード(Jawād ʻAwād) 無所属
- 教育・高等教育大臣:アリー・アブー・ザハリー(ʻAlī Abū Zahrī)
- ワクフ宗教関連大臣:マフムード・ハッバーシュ(Maḥmūd al-Habbāsh) ファタハ(元ハマース)
- 通信情報技術大臣:サファー・ナースィルッディーン(Ṣafā’ Nāṣir al-Dīn)
- 法務大臣:アリー・ムハンナー(ʻAlī Muhannā) ファタハ
- 農業大臣:ワリード・アッサーフ(Walīd ʻAssāf) ファタハ
- 文化大臣:アンワル・アブー・イーシャ(Anwar Abū ʻĪsha)
- 社会担当大臣:カマール・シャラーフィー(Kamāl al-Sharāfī) 無党派
- 女性担当大臣:ラビーハ・ハムダーン(Rabīḥa Ḥamdān) ファタハ
- 囚人釈放者担当大臣:イーサー・カラーキウ(ʻĪsā Qarāqiʻ) ファタハ
- 計画担当大臣:ムハンマド・アブー・ラマダーン(Muḥammad Abū Ramḍān)
- エルサレム担当大臣:アドナーン・フサイニー(ʻAdnān al-Ḥusaynī)
第三次ハムドゥッラー内閣(2014年6月2日発足・2015年7月31日改組・第17代内閣)
-
- 首相:ラーミー・ハムドゥッラー(Rāmī Ḥamd Allāh) 無所属
- 副首相:ズィヤード・アブー・アムル(Ziyād Abū ʻAmrū) 無所属
- 経済担当副首相:ムハンマド・ムスタファー(Muḥammad Muṣṭafā)
2015年8月に辞任・後任なし - 閣議議長:アリー・アブー・ディヤーク(ʻAlī Abū Diyāk)
2016年9月28日よりサラーフ・アルヤーン(Ṣalāḥ ʻAlyān) - 外務担当大臣:リヤード・マーリキー(Riyāḍ al-Mālikī)
- 内務大臣:ラーミー・ハムドゥッラー(首相と兼任) 無所属
- 運輸交通大臣:アラーム・ムーサー(ʻAlām Mūsā)
2015年7月31日よりサミーフ・トゥバイラ(Samīḥ Ṭubayla) - 金融大臣:シュクリー・ビシャーラ(Shukrī Bishāra)
- 国家経済大臣:ムハンマド・ムスタファー(経済担当副首相と兼任)
2015年7月31日よりアビール・アウダ(ʻAbīr ʻAwda) - 労働大臣:マアムーン・アブー・シャフラー(Ma’mūn Abū Shahlā)
- 地方行政大臣:ナーイフ・アブー・ハラフ(Nāyif Abū Khalaf)
2015年7月31日よりフサイン・アウラジ(Ḥusayn al-Aʻraj) - 住宅公共施設大臣:ムフィード・ハサーイナ(Mufīd Ḥasāyina)
- 観光文化財大臣:ローラー・マアーイア(Rūlā Maʻāyʻā)
- 保健大臣:ジャワード・アワード(Jawād ʻAwād) 無所属
- 教育・高等教育大臣:ハウラ・シャフシール(Khawla Shakhshīr)
2015年7月31日よりサブリー・サイダム(Ṣabrī Ṣaydam) ファタハ - ワクフ宗教関連大臣:ユースフ・アドイース(Yūsuf Adʻīs)
- 通信情報技術大臣:アラーム・ムーサー(2015年7月まで運輸交通大臣を兼任)
- 法務大臣:サリーム・サッカー(Salīm al-Saqqā)
2015年12月14日よりアブー・アリー・ディヤーク(ʻAlī Abū Diyāk) 無所属 - 農業大臣:シャウキー・イーサ(Shawqī al-ʻĪsa)
2015年7月31日よりスフィヤーン・スルターン(Sufiyām Sulṭān) - 文化大臣:ズィヤード・アブー・アムル(副首相と兼任)
2015年12月14日よりイーハーブ・ブサイスー(Īhāb Busaysū) 無所属 - 社会担当大臣*:シャウキー・イーサ(農業大臣と兼任)
2015年12月14日よりイブラーヒーム・シャーイル(Ibrāhīm al-Shāʻir) - 女性担当大臣:ハイファー・アガー(Hayfā’ al-Aghā)
- 計画大臣**:シュクリー・ビシャーラ(金融大臣と兼任)
- エルサレム担当大臣:アドナーン・フサイニー(ʻAdnān al-Ḥusaynī)
*社会担当省(Wizāra al-Shuʼūn al-Ijtimāʻī)は社会開発省(Wizāra Tanmiya al-Ijtimāʻī)へと名称変更がなされた。
**計画省(Wizāra al-Takhṭīṭ)は、2015年9月時点で解散の方針が閣議によって示された。
出典
- ʻAbd al-Hādī, Mahdī, ed. 2008. Filasṭīnīyūn. Jerusalem: PASSIA.
- Majlis al-Wuzrā’, Dawla Filasṭīn, “al-Ḥulūmāt Filasṭīnīya, al-Ḥukūma al-Khāmisa ʻAshar” (パレスチナ内閣Webページ・内閣リスト・第15代内閣)(アクセス日:2018年10月19日).
- ―――, “al-Ḥulūmāt Filasṭīnīya, al-Ḥukūma al-Sādisa ʻAshar” (パレスチナ内閣Webページ・内閣リスト・第16代内閣) (アクセス日:2018年10月19日).
- ―――. “al-Ḥulūmāt Filasṭīnīya, al-Ḥukūma al-Sābiʻa ʻAshar” (パレスチナ内閣Webページ・内閣リスト・第17代内閣) (アクセス日:2018年10月19日).
- al-Ayyām, “Nā’bān wa Khamsa Wuzarā’ Judud fī Ḥukūma al-Ḥamd Allāh,” 7 Jun. 2013 (アクセス日:2018年10月27日).
- ―――, “al-Ra’īs yastaqbil-hu al-Yawm Ghumūd ḥawla Maṣīr Ḥukūma al-Usbūʻayn,” 21 Jul. 2013 (アクセス日:2018年11月4日).
- ―――, “al-Ḥukūma al-Sādisa al-ʻAshar tu’addī al-Yamīn al-Qānūnīya amāma al-Ra’īs,” 20 Sep. 2013 (アクセス日:2018年10月27日).
- ―――, “al-Ra’īs yuʻlin Nihāya al-Inqisām wa Istiʻāda Waḥda al-Waṭan wa al-Mu’assasāt,” 3 Jun. 2014 (アクセス日:2018年10月27日).
- ―――, “Khamsa Wuzarā’ Judud yu’addūna al-Yamīn al-Qānūnīya al-Yawm, “Ḥamās” tarfiḍ al-Taʻdīl: Inqilāb ʻalā al-Muṣālaḥa,” 31 Jul. 2015 (アクセス日:2018年11月4日).
注
所属政党・党派については、以下を基準として判断した。
a. ʻAbd al-Hādī [2008] に記載される政党または党派、およびその関連団体での役職経験の有無。
b. 2006年PA立法評議会選挙に立候補した人物の場合は、その際の所属政党。
c. 本人のWebサイト、またはパレスチナ内閣Webページ掲載の個人プロフィールでの表記。
上記を参照の上で所属政党が不明の人物については、当該欄を空欄とした。
(2018年12月3日作成、2019年4月15日更新)